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カスタマージャーニーマップを作成する際の注意点

 まずは、現状のカスタマージャーニーマップを作成します。といっても、1枚のジャーニーマップをワークショップ等で作るのではなく、カスタマージャーニーNAVIではデータドリブンで自動生成するアプローチを推奨します。何故かというと、カスタマージャーニーをベースにマーケティングを考えていく上で、実際のブランドへの態度変容や購買行動を反映するという「客観性を担保」し、意思決定上重要である「定量的な根拠」を持った戦略ツールとして成立させ、「時間的/人的コストを削減」する観点から、データドリブンで行うアプローチの方がメリットが多いからです。

 ワークショップなどでカスタマージャーニーマップを作成する場合、ペルソナ1体につき現場の実務家の工数をおよそ半日から2日ほどとられます。そして参加者が増えるほど多くの主観や経験則が入るため、全部盛りでモヤっとしたジャーニーマップになりがちです。加えて定量的な根拠がない為、「そのカスタマージャーニーで本当にあってるの?」「顧客は本当にそう動いているの?」という疑問が常について回ります。また定量データとの接続を前提に考えられていないため、施策実施後の効果測定やカスタマージャーニーがどう変化したのかなどの検証ができない、という問題も起こります。

 データドリブンのアプローチではこれらの問題を回避する事ができます。そしてデータさえ取得しておけば、属性や価値観、パーセプションや生活文脈など、切り口を変えて様々なペルソナのカスタマージャーニーマップを欲しい時に欲しいだけ作成する事ができます。例えば、

 

 「もしこの軸で切った場合は、どういうカスタマージャーニーになるの?」
 「このターゲットの今のカスタマージャーニーってどうなってるの?」
 「ブランドに好意を持ってくれたターゲット層と、そうでない層のジャーニーを比較して何が違うのか

  見てみたい」
 「カスタマージャーニーが過去から現在までどう変化してきたのか?」

などの疑問が出た時に、即座にその場合のカスタマージャーニーを可視化する事が可能です。

現状のカスタマージャーニーをデータドリブンで作成する方法

 カスタマージャーニーは直線的ではありません。また同じターゲット層でも購買に至るまでのジャーニーは個人間で異なって当然です。従ってまずはターゲット層のジャーニーを統合して、ターゲット層を代表するカスタマージャーニーマップに落としこむ処理を行います。具体的にはターゲット層のカスタマージャーニーマップを複数用意し、購買行動や意思決定、ブランドに対する態度形成における共通パターンを特定、その情報を基にジャーニーを統合してターゲット層の代表的な「買い方・選び方」を1つのカスタマージャーニーマップとして表現します。カスタマージャーニーの統合は、「カスタマージャーニーの共通性をモデル化する」という考え方に基づいて進めます。ここで、「買い方や選び方には共通する部分もあるが、個人個人異なる部分もある」と仮定します。統計学では前者を「共通性」、後者を「異質性」と呼びます。そしてターゲット層のカスタマージャーニーの統合とは、前者の共通性を取り出す作業に該当します

 

 共通性というのはカスタマージャーニーの内、「みんな大体同じだろう」と仮定できる行動や感情パターンの事です。例えば、家や金融商材などの高関与商材は通常、情報収集や評価を念入りに行い、時間をかけて購買する認知学習が行われます。逆にお菓子や飲料水などの多くは感覚的、直観的に選ばれる条件付け学習が行われるでしょう。普通これは逆転しません。商材とターゲットペルソナが同じなら、その集団での「買い方の平均」をとれば買い方は特定のパターンに収束してきますので、大体多くの人がこういう選び方・買い方をする、というパターンを見つけることができます。それが統合されたカスタマージャーニーマップの軸となります。ジャーニーマップに記載する情報としては、顧客接点、行動、感情、それぞれのフェーズにおける課題などがよく取り上げられます。このターゲット層に対して一般化されたカスタマージャーニーマップでブランドの現状把握をする事が、カスタマージャーニープランニングの出発点になります。

 ちなみに、ターゲットのペルソナなどを既に作成していればそのデータを参考にしてもよいのですが、データドリブンで現状のカスタマージャーニーマップを作成するアプローチだと、出力されたカスタマージャーニーを理解する行為自体が、ターゲットペルソナを作り上げ、理解する行為を内包します。どういう事かというと、カスタマージャーニーはペルソナの動的な行動プロセスを表す為、カスタマージャーニーを可視化する過程で、必然的にそのジャーニーの主語であるペルソナは見えてきます。逆に静的なプロファイルとしてのペルソナがあるだけでは、ブランドが今後目指すべきカスタマージャーニーは導けません。
 

​カスタマージャーニーの教科書

4章

データドリブンで

カスタマージャーニーマップを作成する

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 カスタマージャーニーマップを利用すると、ブランドがどう選ばれているか、現状のブランド体験が顧客の購買行動にどう影響しているのかを把握できます。この作業は、顧客の課題とそれに対してブランドが果たすべき役割を特定する際に重要であり、今後ブランドが目指すべき理想的なカスタマージャーニーのデザインや、展開すべき施策を開発する出発点となります。

 

 本章では、このカスタマージャーニーマップをデータドリブンで作成するメリットとガイドライン、及び同様にターゲットを理解する為のツールとして用いられる「ペルソナ」との関係性について解説していきます。

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